Benjamin Britten II
FMC-5045
- テノール
- 辻 裕久
- ピアノ
- なかにしあかね
- ハープ
- 木村茉莉
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収録曲
- Birthday Song
- 誕生日の歌
- My Early Walk
- 朝の散歩
- Wee Willie
- ウィー・ウィリー
- My Hoggie
- おいらの山羊
- Afton Water
- アフトンの流れ
- The Winter
- 冬
- Leezie Lindsay
- リージー・リンジー
- Lord! I married me a wife
- 神様!おいらかみさんもらったが・・
- Lemady
- レマディ
- Bonny at morn
- かわいいお寝坊さん
- Bugeilio’r Gwenith Gwyn
- 白い小麦
- Bird Scarer’s song
- 鳥追いの歌
- Avenging and bright
- 復讐と栄光
- At the mid hour of night
- 真夜中に(モリーに捧ぐ)
- How sweet the answer
- 甘美なこだま
- The Salley Gardens
- サリー・ガーデン
- Oliver Cromwell
- オリバー・クロムウェル
- Canticle V “The Death of Saint Narcissus”
- カンティクル第5番「聖ナルシサスの死」
- A Riddle (The Earth)
- なぞなぞ(地球)
- A Laddie’s Sang
- 若者の歌
- Nightmare
- 悪夢
- Black Day
- ついてない日
- Bed-time
- ねるとき
- Slaugfter
- 殺戮
- A Riddle (The Children you were)
- なぞなぞ(君らも子供だった)
- THE LARKY Lad
- ひょうきん者
- Who are these Children?
- この子らは誰?
- Supper
- 夕食
- The Children
- 子供達
- The Auld Aik
- 樫の老木
演奏家
- 辻 裕久(テノール)
-
東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。同大学院修了。
嶺貞子、畑中良輔、中村健、小山由美の各氏に師事。
1992年渡英。英国王立音楽院大学院演奏家養成コースを、名誉ディプロマを得て修了。
ケネス・ボウエン氏にオラトリオを、ヘンデル、バッハの声楽曲をポール・エスウッド氏に、ダウラント、パーセルの歌曲をロバート・スペンサー氏、イギリス近代歌曲を中心としたレパートリーをイアン・レディンガム氏、ドイツ歌曲をパウル・ハンブルガー氏、オペラを故グラツィエラ・シュッティ女史に師事したほか、卒業後は故ジュフリー・パーソンズ氏、イヴォン・ミントン女史に師事。
ザルツブルグ音楽院夏季講習会奨学金を得て、白井光子、ハルトムート・ヘルの両氏にヴォルフ、シューマン等のドイツ・ロマン派リートを師事した。
1994年、故ダイアナ妃後援による演奏会、ヘンデルのオラトリオ『メサイア』で、ロンドン・ロイヤルフェスティバルホールにデビュー。
イギリス・イヴニングスタンダード紙上等で絶賛され、以来ロンドン・バッハ・音楽祭、フェロー音楽祭(デンマーク)、パーセル没後三百周年グレートエルム音楽祭(イギリス)、国際シューベルト音楽祭(ウィーン)、サントリー音楽財団「サマーフェスティバル」等、各地でテノール・ソリスト、リサイタリストとして招かれ、高い評価を得ている。
日本においても『英国歌曲展』リサイタルシリーズを1996年より毎年各地で開催し、新たな視点によるテーマに沿ったプログラミングでイギリス歌曲の魅力を伝えてきた。
CD『ベンジャミン・ブリテン歌曲集』(『レコード芸術』誌準特選盤/FMC5040)をリリース、ヘンデル『メサイア』(シュナイト指揮/WWCC7403~4)の歌唱でも注目を集め、バッハ、ヘンデル、モーツァルト、ハイドン等のオラトリオ・ソリストとして、また、英語歌唱の指導者としても、公開講座、講習会、各地の合唱団や音楽大学等に招かれ、活躍を続けている。
イギリス20世紀歌曲とヘンデル作品の歌唱に対し、イギリス・グレートエルム声楽賞受賞。
第32回フランシスコ・ヴィニャス国際声楽コンクール第3位並びに最優秀オラトリオ・リート歌手賞受賞。
ニューヨーク・オラトリオ協会国際コンクール入賞。第1回松方音楽賞選考委員特別賞受賞ほか。
現在、滋賀大学教育学部音楽講座助教授、ヘンデル・フェスティバル・ジャパン実行委員。 - なかにしあかね(ピアノ)
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東京芸術大学作曲科卒業。
ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ大学院にて作曲修士号を修め、1999年キングスカレッジ大学院より作曲博士号を授与される。
サー・ハリソン・バートウィスルに師事。
第66回日本音楽コンクール作曲部門第1位受賞、併せて安田賞を受賞。
フランツ・シューベルト国際作曲コンクール入賞ほか数々の公募、コンクールにて上位入賞、入選を重ね、国内外の音楽祭等において委嘱作品を精力的に発表している。
声楽伴奏法を故ジェフりー・パーソンズ、ハルトムート・ヘル各氏に師事。
近年注目されているイギリス歌曲分野の伴奏者として、貴重な存在となっている。
現在、宮城学院女子大学音楽科助教授。
ヘンデル・フェスティバル・ジャパン実行委員。 - 木村茉莉(ハープ)
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5歳よりピアノを外山国彦、田辺徳子の両氏に師事。
9歳よりハープをヨゼフ・モルナール氏に師事。
東京芸術大学音楽部付属高校在学中に渡仏し、パリ国立音楽院に入学、ジェラール・ドゥヴォス教授に師事。
1965年、同学院ハープ科を首席で卒業。65年より67年までフランス政府給費留学生となる。
この間、パリをはじめフランス各地で演奏活動を行う。
1969年に帰国し、第1回のリサイタルを行う。以後、オーケストラのメンバーやソリストとして活躍。
1977年、アンサンブル・ヴァンドリアンに参加、ヴァンドリアのメンバーとして『第一回中島健蔵賞』受賞。
Music Today、民音現代作曲音楽祭、インターリンクフェスティバルなど多くの音楽祭に参加。
現代ハープ作品のスペシャリストとして数多くの曲を初演し、献呈された作品も多い。
現在、東京芸術大学、及び付属高校、作陽音楽大学で後進の指導にもあたっている。
評論
- 「レコード芸術」推薦 畑中良輔氏 評
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日本におけるヘンデルのスペシャリストを目標に、テノールの辻裕久は東京芸術大学卒業後、ロンドンに渡った。
英国王立音楽院にあって彼はヘンデルを専攻しならが、もうひとつ自分にとって新しい分野ともいえるイギリス歌曲のレパートリーを拡げていった。
ロンドンを中心に、イギリスでのヘンデル作品の演奏も、当地で高い評価を得、またダウランドなどの古典からブリテンに至る現代歌曲を積極的に取り上げ、それぞれの体系の中での研究を深めていった。
1996年から日本でも始められた「英国歌曲展」の毎年の意欲的なプログラムも、日本の声楽界に新しい視野をもたらしている。
中でも『ベンジャミン・ブリテン歌曲集』は、歌曲作家としてのブリテンの肖像を日本の歌曲ファンに明確に印象づけるCDとなった。
今月、これに続く第2集が、バーンズやトーマス・ムーアの詩などによる民謡歌曲を集め、木村茉莉のハープ、なかにしあかねのピアノにより、ブリテン流にパラフレーズされた旋律とハーモニーが、独特の世界を次々とカレイドスコープのような愉しさをもって描き出された。
第1集に続く今回のCDによって、日本でもここにやっと「ブリテン歌曲の歌い手」が誕生したの感が深い。
これまでにもブリテンのすぐれた歌曲集、《イリュミナシオン》や《セレナーデ》など、リサイタルにとり上げた日本の声楽家も好演を残しているが、一貫して「ブリテン歌い」としての実績を示すには、いまひとつの感があった。
今回の辻は、特に各曲の表現内容を的確につかみ出し、自己の特質を巧みにすり合せながら、説得性の強い歌となった。
もちろん彼の目標、ヘンデルのオペラ、オラトリオの演奏活動も、目下活発に動いているようだが、同時に「ブリテン歌手」としての仕事を今後大いに期待したい。続く第3巻は何を?…… - 「レコード芸術」推薦 喜多尾道冬 評
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3年ほど前に辻裕久&なかにしあかねのコンビによる『ブリテン歌曲集I」がリリースされた。
そのとき推薦にするか、準推薦にとどめるべきかでずいぶん迷った。
以来ずっと彼の演奏が気になっていた。
こうして第2集が世に出て、再び彼のブリテンに耳を傾ける機会を得たのはうれしい。
ブリテンは外気に鋭敏に反応する皮膚感覚をもっていて、子供のような先入観のないみずみずしい感受性と覚醒感があり、ヴァガボンド風の無頼さも垣間見せる。
バーンズの詩による<誕生日を祝う歌>歌曲集はまさにその典型。
バーンズは野性的な奔放さの内に、神経質なくらいこまやかな心の純粋さを秘めているが、ブリテンはその感覚にぴたりと合う音楽をつけている。
辻裕久はその野性味を、醒めた鋭敏な感覚でみごとに馴化し、これらの曲の持ち味を最大限引き出している。
<朝の散歩>の冷たい朝露に手をふれ、しっとりと濡れる感覚がまぎれもなく伝わってくる。
<ウィー・ウィリー>の心のときめきと白日夢のような恍惚感、<おいらの山羊>の詩と散文のあいだのたゆたい、<アフトンの流れ>は民謡で知られるが、その流れへの郷里的な親密感に対し、はじめてその流れにふれた初々しいよろこびなど、感興をそそる。
また<8つの民謡集>では空気感へエレキのような鋭敏な反応を示している。現実を越えた世界に憑依しかかりながら覚醒感を残し、非現実と現実とがショートしながら走る、そんなスリリングな現象さえ生み出している。
このトランス感覚はそれ自体の表現が目的でなく、無頼の悲しみと、純粋に生きようとする心意気とがショートし、別の世界を覗き込むことで救われたいという切なる願望から出ている。
声はこうして現実と非現実のあいだを浮遊し、もう一瞬でひょいとあちらの世界に入ってしまいかねない。演奏はそのつかず離れずの危うい感覚に鋭く迫る。
子供はそんな危険な境に位置する存在で、その危うさにブリテンは自分の歌の源泉を見出していた。
辻裕久もそれとのふれ方を知っているようだ。
しかし気のふれかかる危険からいつでもさっと身を引くことのできる賢明さも見えて、それにほっとすると同時に、ちょっと割り切れない思いもして、複雑な気分だ。